《本の紹介》その2: 竹内一正著 TECHNOKING イーロン・マスク(2022年8月)
前回の書籍紹介ではビル・ゲイツを取り上げました。一方のイーロン・マスクは最近日本でも急速に知名度を上げており一体どんな人物なのかと
興味のある方も多いのではないでしょうか。
またちょっと前にはスペースX社の民間人の宇宙滞在経験旅行とかテスラ社EV車の好調な販売と
株価上昇による大きな資産家としての知名度が高く、マスクの個人資産推定は2021年末には34兆4千億円以上とされています。
間違いなく世界最大の個人資産家です。
本著は前回のビル・ゲイツの著書と異なり、これはノンフィクション作家竹内一正氏によるイーロン・マスクについての自伝といった内容です。
イーロン・マスクをよく取り上げるマスコミのTED(世間に広げるべきアイディアのプレゼンをネットで紹介)の番組の冒頭、「スペースX社、
テスラモーターズ社、ボーリング社などのCEO」とだけ紹介されました。ボーリング社とはトンネル掘削事業のことであるが同じスペルで「退屈な」という
意味があるのでTEDの司会者から紹介されたとき聴衆の笑いが起きました。
ロスアンジェルスの交通渋滞解消のための専用トンネル事業のことを本人はまじめに紹介する積りだったからです。
彼の話は退屈どころか皆が聞きたがる話題だからです。しかし話の内容としては私には荒唐無稽すぎるものだとの印象に終わりました。
さて本の内容はここからです。全体構成はまず彼の生い立ちに続いてスペースX社部分がありこれらで1/3ほど、残り2/3ほどのボリュームで
テスラ社と車のことが書かれています。生まれは南アフリカ、そして北米に移り学歴として物理学というのが異色です。
スペースX社創業の理念はなんと将来環境問題の悪化により地球に人類が住めなくなることを考えて人類の火星移住を最終目的とするという壮大な夢と
なっています。使用するロケットは一度に100人乗りで初段ロケットはリユース可能なものとし、飛行コストを大幅に下げるという壮大な計画です。
初段ロケットを回収してリユースするなどと言う構想は当初誰も信じられないものであり、夢物語だと誰もが思ったがこの一部は既に実現してしいます。
100人はともかくあながち全てが荒唐無稽とも言えなくなってきました。
テスラ社についてはシリコンバレーに立ち上げた電気自動車(EV)の会社です。既に全世界で売られており日本でも少しずつお目にかかれるようになって
きました。設計やビジネスのスタイルに独特のものがあり、例えば設計上車内はハンドル、アクセル、ブレーキと計器類は大型の液晶ディスプレイのみと
非常にシンプルになっているとか。自動運転をめざしているが今は道半ばですがあくまで完全自動運転を究極と考えているようです。
各国ともディーラーはなく自社セールスのみ。アメリカのような広大な土地でディーラーなしでアフターサービスは難しいと思われるが
今後の展開に注目が必要です。
またパソコン同様にOSなどのソフトのアップデートもネット経由で行われます。この方式を使いワンランク上の仕様で組立しながら標準仕様として販売しておき、
上位仕様例えばパワーアップを求める客には追加費用でアップグレードできる商売としているようです。
従来のやり方ではパソコンでも車でも買いなおすのが常識だがテスラは異なっています。
とにかく読んでいるうちについアップルの創業者スティーブ・ジョブスと比較してしまいます。二人とも自分で信じた自説を固持するところが
似ているが、ビジネスに対するスケール感はマスクがずっと大きいと言えますが我々の生活を一変させたという観点では今のところ
スティーブ・ジョブスかなとも思います。
このように本著では数々のエピソードやコメントを挿入しながらイーロン・マスクの人物像を描いているが主なものだけでもありすぎて
つまるところ実際に本を読んでもらい各自納得してもらうしかないと思います。最後に写真の本の帯にあるように「ジョブスを越える才能と
ゲイツに勝る資産を持つ男」というキャッチはまさに‟言えてる“と感じました。
とにかく話題性には豊富な人物でありYouTubeには数えきれない動画が関連話題として上がっていますので申し添えておきます。
こちらも京都市図書館で借りることができます、興味のある方は是非にとお勧めします。
なおこの書籍は朝日新聞出版より出版されています。
By kentsan