パソコンの文字、おかしなことになっています(2018年6月)
図1は皆さんご存知の京都の甘味所「辻󠄀利」の看板ですがよく見ると「辻󠄀」の文字のシンニュウ部分は三点のシンニュウとなっており我々慣れ親しんでいる一点シンニュウとは異なっています。
ところがWindows10パソコンでは「つじり」は「辻利」と変換されて二点シンニュウとなります。そして一点の「辻󠄀」の文字だけを無理に変換しようとするとIMEでは「環境依存」と出てしまいます。図2参照。
このように私たち日頃何気なく使っているパソコンの文字ですが、パソコンで使う文字は標準字形と思っていたものも時間とともに「環境依存文字」となっています。ここでいう「字形」とは、例えば「あお」という漢字は「青」とも「靑」とも表記し、しかも「あお」と読み意味も同じものです。そしてこれら読み・意味は同じだけれども字形が異なる文字を異字体とも称しています。
パソコンで使用する文字はJIS、即ち日本工業規格で決められており平成16年2月最新のJIS漢字コード表で168字が改正されました。
さて前振りが長くなりましたが、この新しいJISで改正された漢字群のなかには従来我々が慣れ親しんだ漢字が多く改正されているのです。
例えば旧「鯖󠄀」は新「鯖」となり、旧「辻󠄀」は新「辻」となったことです。また地名では旧「葛󠄀」は新「葛」となったので新字形では「葛飾区」となりました。同様に「辻利」となり「鯖江市」となります。
これら地名はそれぞれのホームページでは新字形となっているかと思い調べてみました。すると「かつらぎ市」のみは旧「葛󠄀城市」字形をあえて使っていることが判明しました。しかもページの中ではなぜ旧字形を使っているのか説明までありました。葛󠄀城市が旧字形をあえて使用する理由としてパソコンのOSが関係していると説明しています。即ち葛󠄀城市が市町村合併して誕生した時点でのOSはWindows XPやVistaが全盛でその時点での字形は上記の旧字形のみ使用できたという理由だそうです。
このことからパソコンのOSと標準字形とは関連があることがうかがえます。現在の最新OS(Windows 10や8.1)では標準では新字形のみの表示となっており、わざわざIME設定(注)を変更して表示・印刷しなければこの文章も書けないことになります。人名・地名は使用者が旧字形や異字体をあえて選択できることも否定はできないので、本来「最新OSでの表示は新字形のみ」というのはちょっと変だなとも思えますね。
それにしてもなぜあえて平成16年にこの様な変更が加えられJISが発行され、パソコンOS
メーカーがそれに準拠することになったのか。JISを管轄する経済産業省プレス発表資料には「国語審議会で答申」された表外漢字字体表にJISを合わせたとなっていますが、その真相は不明のままとなっています。
ちなみに我が家のXPモデルで試しに入力してみたところ旧「青、鯖󠄀、辻󠄀、葛󠄀」としか入力・表示できませんでした。またホームページで「辻󠄀利兵衛」商店や「辻󠄀井伸行」を調べてみるとそれぞれのトップページの中では「辻󠄀」も「辻」も混在して使用されているようです。これは混在というより混乱に映ってしまいます・・・。
(注)Windows10などの新しいパソコンでは標準設定で環境依存文字は表示しない設定になっています。これを表示するにはIMEの「詳細設定」「変換」の「変換文字制限」で
「変換文字制限をしない」にチェックを入れ「IVSを含む文字を制限する」のチェックを外します。図3参照。
by Kentsan